爪が伸びてきた。弦楽器を弾く際には爪が長いとジャマになるので短くしておかなければならない。そこで爪切りなどで切るわけであるが、ふと昔読んだ「名探偵コナン」の凶器に「伸ばした爪」というものがあったことを思い出した。
本当に鋭くできるのかと思い、ヤスリで削って形を整えてみた。
しばらく削っているうちに、だんだん自分の爪が凶器に見えてきた。恐らく、爪を立てるようにして腕を一閃させればガラス戸とて真っ二つになることだろう。小生、爪を加工する自分の技術が恐ろしくなった。
その後、様々な工程を経て小生の爪は完成した。右手はまさに凶器であり、うっかり「人の肩を叩いて振り向いた顔に指をぷにっ」とかやろうものならばその人の頬に風穴が開くんじゃないかと思った。
とんでもないものを作り上げてしまったと後悔する反面、心のどこかは高揚していた。手に入れた武器に酔いしれるまま、右手を一閃、近くにあったタンスに叩きつけた。
ヘンな音がした。
確認したのだが、どうもタンスは無傷らしかった。
しかもよく見ると何だか右手の指がおかしな方向に曲がっているようにも見えるが、気のせいだと思う。