隣の県に住む友人に用があり、電車に乗って向かった。目的地を間違えることもうっかり乗り過ごすこともドアに服を挟まれることもホームに落ちて電車に踏み潰されることもなく平和に目的地に着いた。


用事を片付けた後、友人とビリヤードをした。小生如きがビリヤードなどというお洒落なスポーツをやっても良いものかと内心びくびくしていた。
あのキューとか言う棒きれで球を突っつくわけであるが、あの球の丸さと言ったら惚れ惚れする程であった。サイヤ人が見たらきっと大ザルに変身すること請け合いである。小生はサイヤ人ではなかったので変身することはなかったが、過去に何度かサイヤ人が来ていたのか、一部の壁や天井が壊れて吹きさらしになっていた。良く見ると壁には「サイヤ人お断り」の張り紙がしてあり、店員も来店する人間のお尻に尻尾がないか確認しているようだった。小生、ビリヤード場で迫害される立場のサイヤ人の皆さんに少し同情した。
そんな涙ぐましい営業努力を尻目に、小生、あの球があまりに丸いのでつい見惚れてしまっていることが何度もあった。小生が球を何度も場外に飛ばしていたが、それは飛んでいく丸い球の美しさをじっくりと観賞するためである。


帰り道、電車の中で一組のカップルがイヤホンを分けて同じ音楽を聴いていた。女性が耳からイヤホンを外して「良い曲だったね」と言い、
「良かったね」
と男が答えていた。
「ヨカッタネ」
小生もそう思った。